離婚調停において慰謝料や親権が決まらない…そんなときに使える「分離方式」とは
離婚には同意するけれど、慰謝料の額やどちらが親権を持つかが決まらない…。
このようなとき、とりあえず離婚を成立させて、争っている部分は後で解決する方法があるのです。
これから離婚調停をする方、現在離婚中の方にぜひ知ってもらいたい「分離方式」についてまとめました。
この記事の目次
「条項」「分離方式」とは何か?
離婚調停が成立すると、調停で合意した内容をまとめた「条項」というものが作成されます。
かならず必要なのが「申立人と相手方は、本日調停離婚する。」という離婚条項。
加えて、未成年の子の親権指定条項や財産分与条項、慰謝料条項などが作成されます。
そして離婚条項以外の条項を指して、「附帯事項」といいます。
これら附帯条項のうち、民法上、離婚と同時に決定しなければならないとされているのは親権だけ。
そのため、先に離婚調停を成立させて離婚条項だけを決定し、残りの付帯条項を別の調停や訴訟で争うことができるのです。
離婚と附帯条項を別で解決することから、この方法を「分離方式」といいます。
しかし、通常の離婚調停の場合、「附帯条項が決まらなければ離婚もしない」という人が多いため、離婚調停成立と附帯条項の解決を同時に行うことが多数を占めるのです。
また調停員も「附帯条項まで決まったら離婚成立にしよう」と考えていることがあるので、分離方式の提案をしてくれないことも。
調停離婚を目指す人は、「分離方式」があることを頭の片隅に置いておきましょう。
分離方式の2つの方法
分離方式には、2通りの方法があります。
調停成立+審判
ひとつは、離婚調停自体は成立させ、附帯事項については調停不成立とする方法です(一部成立・一部不成立)。
この場合、附帯事項は乙類審判事項として、審判手続きに移行します。
審判手続きは、申立てなどを必要とせず、調停が終了した段階で自然に移行します。
そのため、「附帯事項についてさらに争う気持ちがあるのか」という当事者の意思をくみ取りづらく、裁判所はあまり使用したがりません。
離婚条項+別途解決する旨の条項
もう一つの方法は、附帯事項については別途家事調停、審判または裁判で争う方法です。
この場合には、調停離婚の合意の条項に加え、附帯条項については別途調停・審判を申し立てて解決する旨の条項を作成することになります。
こちらの方法ですと、申立ての前に当事者間で話し合いをすることもできますし、やはり申し立てはしないということも可能。
このような理由から、裁判所ではこちらの方法を採ることが多いようです。
親権者の決定を分離したい
先ほど述べた通り、子どもの親権者については、離婚と同時に決定しなければならないという法律上の決まりがあります。
ただしこれは原則論であって、裁判所は以下の3つの手段をとることを認めています。
それぞれメリット・デメリットがありますので、あわせてご紹介しましょう。
①離婚調停全体を不成立にして離婚訴訟で争う方法
メリット:裁判官により公正に親権者が指定される
デメリット:家庭裁判所の公開法廷で行われ、手続きが複雑である
➁離婚とその附帯事項を両方とも審判にかける
メリット:調停手続きから申立てなしに移行できる
デメリット:相手から異議を出されると失効してしまう
③調停離婚を成立させ、附帯事項については別途解決する
メリット:早期に離婚が確定する
デメリット:親権者が決まらないうちに法的に離婚が確定してしまう
親権について争いがある場合、ほとんどの方は③の方法を選びます。
しかし、ここでひとつだけ問題が。
離婚をしても親権者が決まっていないため、児童扶養手当など行政から出るお金がもらえなくなってしまうのです。
そこで③の方法を採る場合には、仮の親権者を定めておく必要があります。
調停証書に「長男及び長女の親権者が決まるまでの暫定的な措置として母である申立人を監護者と定める」と書いてもらいましょう。
相手が自分の非を認めない!こんなときにも分離方式が使える
浮気やDVなど相手に明らかな非があるにもかかわらず、これを認めない場合も、分離方式は有効です。
状況としては、相手が悪いことをして離婚には同意したけれど、離婚原因自体(DV、浮気)を認めない場合を想定してください。
浮気された側、DVをされた側としては、何としてでも相手に非を認めてほしいですね。
そこで、調停で離婚を成立させ、別途裁判で慰謝料請求をするのです。
離婚という結果も手にいられますし、何より公開の法廷で相手の罪を問うことが可能。
もっとも大半のケースでは、自分の悪事が公開の場に出ることをおそれ、調停段階で慰謝料を支払ってくれます。
まとめ―決まらないときは分離方式を申し出る
離婚調停を申し立てる場合、もちろんお金のことも心配ですが、「まず離婚したい」という方が多いでしょう。
そのため、分離方式を積極的に活用するべきです。
附帯条項について決まらないようであれば、自分から調停委員に「分離方式にしてほしい」とお願いしてみてください。